「電波時計、正気に戻る」ポエム9

 電波時計がしばらくおかしくなっていた。

 ある日の深夜、突然のアラーム音とともにおかしくなってしまった電波時計は、以来、電波の受信をかたくなに拒み続けていた。自分がおかしくなったその日を、1月1日として、標準時より2時間40分進んだ時間を表示していた。ただ、午前午後の表示の正確さにはこだわっていて、朝の10時を午前12時40分と言い張ったし、夜の10時は午後0時40分だと主張した。頭がおかしくなりそうだから、裏向きにしておいた。

 でも、正確な時間を表示し続けることを強いられていた彼が、電波の言いなりになることを拒み、自分のペースで生きることに決めたことが、僕はうれしかった。人間の世界よりも、はるかに上意下達の要請や同調圧力が強い時計の世界で、SEIKOの時計が、自らの時間を生きようとしていた。

 あるいは、僕の考えすぎなのかもしれない。彼は単に、2,3時間は寝坊してしまうこともある僕のようなダメ人間を助けようと、あえて2時間40分進んだ時間を教えようとしてくれていただけなのかもしれない。

 いずれにせよ、僕は、僕のかわいい電波時計が2時間40分進んでいることを考慮して、目覚ましをセットした。しかしその日の深夜、彼は電波を受信することにしたらしい。

   電波時計のアラームに起こされてスマホを見ると、2時間40分遅刻していた。

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